インテリア好きなら、いつでもキャッチアップしておきたい、最新のトレンド情報。いま世界で注目されているキーワードや、自分らしくトレンドを取り入れるためのコツを、日本だけでなく世界のインテリアトレンドをキャッチし続けるインテリアコーディネーター・網村眞弓さんに教えていただきました。
記事上部画像:© Courtesy of Messe Frankfurt GmbH/Breathe by So-il for Mini Liging
最新インテリアのキーワードは“ユートピア”! それってどんなお部屋なの?
都市型傾向によって、“狭くても機能的に・心豊かに”がトレンドに
国連の発表によると、2030年には推定人口が1000万人を超すメガシティ(超大都市圏)が世界に41出現、今世紀の終わりには、多くの人が都市に住むようになるであろうと試算されています。
都市に人が集中するようになると、住まいやインテリアにも大きな影響を及ぼします。たとえば、一人当たりの居住スペースの大きさ。人口増加により狭くならざるを得ず、インテリア要素的にいえば、狭さを軽減するナチュラルでソフトな色合いが好まれるようになっています。
狭い空間で活躍する、多機能でマルチな用途に活用できる家具や照明なども多くなっている印象です。
都市化によるミニスペース/ 狭くても機能的な空間
© Messe Frankfurt GmbH/Photo-By-Moon- Ray-Studio
また、都市では大家族との暮らしが減り、一人暮らしの傾向が強くなることで、より個人の好みに合わせて、家を自由に使うようになります。
たとえば、住まいでありながら創作のアトリエとなったり、デジタル技術を活用して遠隔地とのやり取りもする共同創作ラボとなったり、作ったものをSNSを通じて発信し、インターネット上で販売するスタートアップ企業の場になったりと、生活スタイルや好みに合わせたカスタマイズができる住まいというのも、最近のトレンドといえるでしょう。
都会での生活はストレスも多く、自然との距離も生まれることになります。家の中にリラックス効果のある色を取り入れて明日への活力を補ったり、植物を室内に取り入れたりして、心と体を整えることが必要となってきます。
さらに、多くの人の都市への集中は、理念・文化の異なるさまざまな人や部族と共存する暮らしを余儀なくします。心地よく暮らすためには相互理解が必要ですが、そこで役立つのが子供のころの“遊び”だといわれています。
遊び心のあるプロセスを通じた学習は、あらゆる年齢の人々にとって健康的で前向きな関心事となり、軋轢を軽減して互いの理解を深めるのに貢献するというのです。
昨今の“住まい”には、リラックスして元気をチャージしたり、楽しい気持ちをもたらしてくれたり、ストレスを軽減して心を休めたりできる、サンクチュアリとしての役割が求められているのです。
サンクチュアリ/デジタルライフから逃れ心休める空間
© Messe Frankfurt GmbH/photography- by-andrea-ferrari
その役割を果たすために、インテリアトレンドのキーワードのひとつとなっているのが、“ユートピア”です。
“ユートピア”なインテリアを実現するためのポイント
心踊る、プレイフルな色やモチーフを選ぶ
“ユートピア”の言葉の意味そのものは、 “理想郷”や“楽園”。これをインテリアにどう取り入れるかというと、気分を上げてくれたり、癒しを感じたり、安心できたり、楽しい気持ちになったり……そんな具体的なイメージに置き換えてみるといいでしょう。
まず取り入れるなら、色やモチーフから。
世界的なトレンドは、バーントオレンジやイエローなど、元気の出る色味です。シンプルな空間も素敵ですが、好きなモチーフを取り入れて遊び心をプラスしてみるのも、心踊る空間への第一歩です。
ハイムテキスタイル展/ユー トピアトレンド
© Color Design Firm / mayumi amimura
マルチな機能と、テクスチャーの豊かなものを選ぶ
狭いスペースを有効に活用するためには、アジャストや組み直しが容易な、マルチな家具や照明、カーテンを選びましょう。たとえばエクステンション可能なテーブルや、ソファベッド、収納付きのオットマンやスツールなど、さまざまな空間にフィットする、フレキシブルなものが各メーカーからたくさん出ています。
また、製品の品質は向上し、機能的には飽和状態ともいえる現代のインテリアアイテム。選ぶポイントとしては、豊かな色彩やテクスチャーなど、「これ、好き!」と思える感覚的要素の付与が求められていきます。
目にしたとき、そして手で触れたときに感じる、「爽やか」、「心地よい」、「落ち着く」などの感覚は、言語を超えて人に共通する、これから求められる要素です。マットやツヤ、エンボスなど、手を加えたテクスチャーの豊かな色彩によるプレミアムな表現や自然素材は、五感に訴えるSensory素材として、楽しさや安らぎをもたらしてくれるはずです。
自然を取り入れたインテリア
© Color Design Firm / mayumi amimura
健康な暮らしに欠かせない空気や緑を大切に
都市部での暮らしは、空気の問題や安全な水の確保など、健康を維持する要素も欠かせません。地方の暮らしに比べて自然環境との距離も生まれるため、ストレスを軽減しにくい環境にあるともいえます。
そこで、家の中に、そうした安心・安全な要素を取り入れることをおすすめします。たとえば観葉植物を取り入れて、生きた緑に触れる。植物が難しければ、ナチュラルな色味をベースにしたり、生き生きとしたモチーフを取り入れたりして、心と体の健康を保ちましょう。
第2の自然・バーチャルリア リティとの新たな関係
©Heimtextile Trend Book/SECOND NATURE; HIDDEN LAYER BY FIELD
さらに、きれいで心地よい空気でお部屋を満たすことも大切です。エアコンやサーキュレーター、空気清浄機などを活用した、体にやさしい空気が都市部での暮らしの必須事項となるでしょう。「risora」のように、カラーやテクスチャーのバリエーションが豊富な製品を選べば、優しい空間をつくったり、パンチを効かせたインダストリアルな空間にしたりと、今のトレンドの楽しい空間やリラックス空間を想像させ、夢を広げることができます。多様化する個々のニーズに応答し、豊かなインテリア表現を可能にしてくれることでしょう。
<プロフィール>
網村眞弓 あみむら・まゆみ
Color Design Firm 代表、インテリアデザイナー、日本IBM研究所、グレイインターナショナル・メディアプラン、スワロフスキージャパン・PR・CRマネージャー歴任。日本初の小規模多機能高齢者住宅を始め医療・高齢者の施設計画。英国、ケンブリッジ・インスティチュート修了。スイス、エコール・デュ・ボアにてインテリア様式および建築模型制作コース修学。トレンドを経年視察し、市場分析およびアジアでの導入やグローバル戦略セミナー、コンサルティング等を行っている。