日本でもレジ袋が有料化され、買い物のときにエコバックを持参するのが当たり前となってきました。

一方、海外を見渡すとさらに一歩進んだ買い物のスタイルが、広がりを見せ始めています。”バルクショップ”と呼ばれる量り売りのお店がその1つで、 日本でも一部のお店で導入が始まっています。フランスでは”アン・ヴラック”と呼ばれ、パリを中心に人気となっているそう。今回は、買い物の最前線とも言えるフランスの”アン・ヴラック” についてご紹介します。

プラスチックが地球の温暖化を加速させてしまうということは、よく知られています。そこでプラスチックのストローやレジ袋をきっぱりやめてみるのはどうでしょうか?現在、世界で産出される石油の約8%がプラスチックに加工され、そのプラスチックの40%以上が、たった一度しか使われない包装材になっているそうです。この衝撃の数字を、私たち一人ひとりの努力で何とか変えることはできないでしょうか?

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その答えになりそうな考え方が、フランスの”アン・ヴラック”と呼ばれる買い物のスタイル。パリを中心に、フランス全土に広がろうとしています。

フランス語の”アン・ヴラック”を英語で言うと”イン・バルク”、つまり”バラ売り”という意味。でも想像するお店の形態とはちょっと違います。フランスにもコストコはあり、売り場にはシリアルの箱が搬入ケースのままうず高く積み上げられていますが、これはアン・ヴラックではありません。アン・ヴラック方式の店の多くは小さな個人商店で、乾物や家庭用洗剤から、フルーツや野菜、乳製品までさまざまな商品を売っています。大きな特徴は、店内の商品がどれも包装されていないこと。買うときは自分で持ってきた、ガラス瓶や布袋など使い捨てでない容器に欲しい分だけ入れ、重さに応じて代金を支払います。昔ながらの健康食品店や生協と同じような売り方ですが、アン・ヴラックと呼ばれる店には、グルメなこだわりやトレンドを反映した最先端の店が多いという特徴があるのです。

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パリ市内にも、アン・ヴラックの店がどんどん登場しています。18区の「レティエ・ド・パリ」は小さな店ですが、手作りのチーズやヨーグルトが人気です。ヨーグルトの値段は3~4ユーロ、そのほかにガラス容器のデポジットとして50セントが必要ですが、次回からは空き容器を持って行けば、50セントは払わずに新しい商品を買うことができます。牛乳も同じ方法で、容器を持って行けば生乳が1リットル2ユーロ以下で手に入ります。ここの商品は、ハードチーズ以外はほとんどすべて自家製で、アン・ヴラック方式で購入できます。

今ではパリの新しいトレンドとなったアン・ヴラック。フードコープ(食品専門の生協)のように生鮮品を中心に扱う店もあれば、さまざまな種類の小麦粉や、量り売りのワインを扱う店まで、商品の幅も広がってきました。9区には、なんと豆腐の専門店まで登場。できたての豆腐を切り売りしてくれる豆腐ファンにはありがたいお店です。また多くの店が扱っているのが、ビネガーです。それぞれの店のコンセプトに合わせて品揃えされているのでとても便利です。18区にある「アン・ヴラック」というアン・ヴラックそのもののお店では、ハードリカーやシードルまで量り売りされています。さらに、自家製ワインの作り方講座も開催。酒類を量り売りで買うには空のボトルを持ち込む必要がありますが、デポジットを払えばボトルが受け取れますので心配はいりません。次からはそのボトルを持って行くようにしましょう。酒店以外での買い物なら、広口のガラス容器やふた付き容器などを持って行けば大丈夫です。

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スタイリッシュさが印象的なのは、3区にある自然食品の店「ネゴツィオ・レジェーロ」。扱っているのはパスタや乾燥豆、穀類といった一般的な乾物のほか、各種スパイスやビスケット、茶葉、さらには洗剤、ワイン、化粧品、オイル類とバラエティ豊かで、商品を入れた大小さまざまな形のガラス容器が壁際の棚に美しくディスプレイされています。さらに店の中央付近にあるテーブルにも、天板の下に吊り下げるように商品を配置。食料品店というより、まるでアップルストアのような洗練された雰囲気です。ここはセルフサービスではなく店員さんが商品を詰めてくれるスタイルですが、容器を持っていないお客さんには紙袋を用意してくれるほか、店頭で容器の販売もしています。

店のオーナーのポーリーン・ヴィゴさんは「プラスチックの生産を減らしたいと考えている人はたくさんいます。しかもほとんどの商品が、量り売りの方が低価格で提供できるのです。30%〜70%安くなることもあるんですよ」と話します。もちろん商品の種類や生産者によっては例外もあります。「私たちは主に小規模な生産者さんから仕入れています。そのため販売量もそれほど多くはありません。商品も仕入れ先も厳選しているんです」

アン・ヴラックの店にはセルフサービスのところもありますが、「ネゴツィオ・レジェーロ」では、店員が商品を詰める作業をしてくれます。これについてヴィゴさんは「食品ロスを減らすためです。商品を詰めながら、お客様に商品情報を伝えたり、レシピのアイデアを提案したりできます」と話しています。商品販売のほか、洗剤や化粧品を手作りするワークショップも開催しています。

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アン・ヴラックは、食品だけではありません。食事のあとの食器洗いに使う洗剤も、量り売りで買うことができます。バス用品やキッチン用品を扱う「ザ・ネイキッド・ショップ」は、シャープなデザインのディスペンザーがずらりと並ぶモダンなインテリアがおしゃれな店。さまざまな種類の食器用洗剤、衣料用洗剤、シャンプーなどから好みに合わせて選ぶことができます。店頭では、パリらしいシックなデザインのボトルも販売していますが、もちろん自分の容器を持参してもOK。

店のオーナーでゼロ・ウェイスターのマリア・メラさんが、ごみを出さないゼロ・ウェイスト生活を始めたのは2010年代半ばのこと。洗剤も量り売りを買うと決めたものの、普通のお店で商品をパッと手に取って買うのに比べ、お店の人に毎回容器に入れてもらうのは面倒だと感じたそうです。そこで量り売りでも簡単に買える店を目指してこのお店をオープンしました。ここではお客さんが自分でボトルに入れるセルフサービス方式ですが、カスタマーカードを機械にタッチするだけで、自動でボトルに充填されますのでとても簡単です。あとはカウンターに行って支払いをすませるだけ。2018年12月の開店以来、利益は毎月右肩上がりだそうです。

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メラさんは、フランスでアン・ヴラックの人気が高まっているのは、自然なことだと言います。理由は、フランスの昔ながらの店のやり方とそれほど違いがないから。「生産者から直接買いたいという意識が高まったという意味では、80年代に始まって90年代に大ブレイクしたオーガニックブームにとても似ていると思います。つまり40年も前から続いている考え方なのです。大規模なスーパーマーケットの進出などもありましたが、それでもフランスでは、パンを買うならこの店、チーズはここ、という風にいくつもの店を回って買い物をするのが当たり前だという文化が残っているのです」

フランスでは”アン・ヴラック”のブームを背景に、店のオーナーたちによって「レゾー・ヴラック」という業界団体も結成されました。所属会員が所有するアン・ヴラック店舗は現在フランスだけでも300店以上。さらに数百店が開店を目指しているそうです。また団体の調査によると、フランスに住む人の2人に1人は、去年1年間に少なくとも一度はアン・ヴラックの店で買い物をしたそうです。ブームはさらに、アン・ヴラック専門店まで生み出しました。「ラ・メゾン・ド・ゼロディシェ(フランス語でゼロ・ウェイスト・ホーム)」には、アン・ヴラックなライフスタイルに役立つガラス容器や布袋、ビーズワックスラップなどが揃っています。また、この店ではパーティー用の食器をレンタルできるサービスも提供しています。皿、カップ、カトラリーなどすべて借りられますので、使い捨てのものを買う必要がありません。しかもレンタル料は無料というから驚きです。

ガラスの容器をいくつも持って店を回り、それぞれの店で1週間分だけ詰めてもらって買って帰るという方法は、なかなかの負担です。しかしアメリカでも、”アン・ヴラック”のムーブメントは起こりつつあります。ゼロウェイスト・アット・ホームやザ・ウェイリー・ショップなどのサイトを見ると、パッケージを使わない商品や店が見つかります。「量り売りで買おう」というのは、これまでずっと自然食品の店が主張してきた考え方でしたが、これを一般の店にも広げようとしているのが”アン・ヴラック”です。ザ・ネイキッド・ショップのメラさんは、アン・ヴラックはとりわけ新しいものでもなければ、おおげさなものでもないと言います。「私たちは何も新しいことを考え出してはいません。プラスチックがなかったころのライフスタイルに戻っただけ。それだけなのです」

 

この記事は Food & Wine のデイナ・エヴァンスが執筆し、NewsCred パブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。